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2016-09-13

アーティストにビジネス思考は必要か?【自分の置かれている状況を理解しよう】

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2015年の日本の音楽ソフト(オーディオレコード+音楽ビデオ)の売上は前年比100%の2,544億円。有料音楽配信売上は、前年比108%の471億円となり、2年連続の増加です。(参照:日本のレコード産業2016)CDの売上はピーク時の1998年に比べると約3分の1に迄減少しています。テクノロジーの発達によってYouTubeとはじめ、様々方法で音楽を聴取できるようになり、CDはもはや「音楽を聞くための流通方法」ではなくなりました。
これからの時代、「音楽で生きていく」には何が必要なのでしょうか?アーティストやアーティストと一緒に音楽ビジネスに関わる人に役立つ記事になればと思い、数回に渡って書いてみたいと思います。第1回目は「自分の置かれている状況を理解する」です。

欧米と日本のアーティスト契約の違い

以下に欧米と日本のアーティスト契約形態を比較してみました。

artist_contract

  • 欧米のアーティストは個人事業主。マネージャーや弁護士を雇い給料を払う立場
  • 日本のアーティストは期間契約社員。事務所に雇われ、メジャーでCDを出すにはレコード会社と「専属演奏家契約」を締結する立場

分かりやすく直接的な単語で表現したことをお許しください…「メジャーデューを目標」とし、音楽活動をしている限り、日本では上記のような契約形態で活動していくことが主流となります。

海外アーティストって発言力が強いと思いませんか?2015年、Appleが音楽ストリーミングサービスApple Musicを開始する際、テイラー・スウィフトが最新アルバム『1989』の提供を拒否ました。テイラーはその理由をAppleMusicの3ヶ月の無料トライアル期間、権利者にロイヤリティが支払われないからだとAppleに対して抗議し、話題となりました。このような事はテイラーがアーティストであり、個人事業主として自分が音楽活動をするための(対音楽業界への)ビジネス的思考を持っているからだと言えると思います。

例えば、日本では、アーティストは事務所と契約している「会社員」的立場でもあるので、個人が堂々と抗議ができるでしょうか?自分を雇ってくれている事務所に迷惑がかかる…等の状況から難しいでしょう。

音楽の環境変化を理解する

ここ10年のテクノロジーの発達によって、音楽環境が変化しました。環境の変化は需要を変化させます。そうすると供給側、つまりアーティストも変化していく必要があります。

・音楽環境の変化と今後高まる需要
音楽環境の変化と高まる需要

  • インターネットのおかげでほぼコストゼロで音楽をユーザーに届けられるようになった
  • その代わり「音楽を無料で聴く」ことが当たり前になりつつある
  • ウェブサービスやSNSを使い、自己PRする力が必要になった

10数年前までは、CD等の物理的メディアで流通するしかなかった音楽も、YouTubeやSoundCloudで全世界に公開できます。TuneCoreを使えば、世界中の音楽ストリーミングサービスに販売も可能です。今、音楽をユーザーに届けるには、情報が溢れるインターネットの波の中で、自分を、自分の音楽を見つけてもらい、ライブに来てもらい、ファンになってもらう為のセルフブランディングやPRが必要になってきます。CDが売れない今、レコード会社が新人発掘に費やす予算は確実に減少しています。よい音楽を作っていれば、レコード会社の目にとまり、いつかメジャーデビューという状況はより厳しい環境になってきました。

音楽業界のバリューチェーンは変化していない

音楽環境は劇的に変化しましたが、実は音楽業界のお金の巡り方は、昔とほとんど変わっていません。以下にバリューチェーンをまとめてみました。(見づらくて申し訳ありません…)

・音楽業界バリューチェーン
musicindustry

  • メジャーでCDを出すと著作権・原盤権は他人に譲渡することになる
  • 業界構造が複雑でアーティストが自分の音楽の売上(CD販売数、DL数、ファンクラブ、ライブ動員)等を把握することはなかなか難しい

考えてみたら不思議な話なのですが、アーティストが身を削って生み出した楽曲なのに、原盤権はレコード会社に、著作権は音楽出版社に譲渡するんです。これはCDはメジャーレコード会社を介して流通され、著作権はアーティストが個人でJASRAC等に登録して、お金を受け取ったりの管理が困難(個人でも信託契約申込金を支払って申し込めば可能)な為です。

音楽出版社って音楽雑誌を作る出版社じゃないですよ!!(私は、最初そう勘違いしました…)作詞家・作曲家と契約締結し、著作権管理を代行することで手数料収入を得ている会社のことです。有名なところでは、フジパシフィック音楽出版(フジテレビ系)、日音(TBS系)などのテレビ局系列、または、レコード会社が音楽出版社を所有しています。

まとめ

今回は、アーティストが置かれている状況を改めて理解できればと思い、契約形態・環境と需要の変化・バリューチェーンについてまとめてみました。

  • 大半のメジャーアーティストは期間契約社員的な立場である
  • 音楽を取り巻く環境は変化した。WEBを上手く使うスキルが必要
  • 音楽業界のビジネスモデルは旧態依然。CD売れないとアーティストに入るお金めちゃくちゃ少ない

音楽で生きていく為には、音楽で収益を出さなければいけないのが現実です。そう考えてみると、音楽業界のビジネスモデルが崩れつつある今、アーティストがアーティスト活動だけをしていればいい時代では無くなりました。少なくとも、アーティストは自分の置かれている状況を理解し、また世の中の変化に柔軟に対応しながら、支援してくれるスタッフと共に活動していくことが必要となりそうです。

数回に渡って書くと冒頭で言ったものの、次回のテーマは考え中です。自己プロデュース力やWEBの使い方等かなぁと考えていますが、何かリクエスト等あればコチラまでお願いします。また、掲載画像は参考資料やヒアリングを元に私が独自に作成したスライドです。間違い等あれば、ご連絡ください。

参考:
日本のレコード産業2016
コンテンツ産業の展望/みずほ銀行

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