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2016-07-31

エンタメ×VRカンファレンス『THE VR PARADE』で感じたVRビジネス化の難しさ

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7月28日にエンタテインメント x VRのカンファレンス『THE VR PARADE』に参加してきました。こちらのカンファレンスは、このブログでもテーマにしているエンターテインメント×テクノロジー「EnterTech」推進するParadeAll株式会社が主催しており、ゲーム企業、放送局、アーティストマネジメント、テクノロジー企業が登壇していました。


センション+トークで5つのプログラムでしたが、エンターテインメント業界で働く人々にとってはとても参考になるいいカンファレンスでした。文章が長くなってしまいますが、備忘録のためにも印象に残った部分をピックアップして記事にしておきたいと思います。

VRのクリエイティブとは

1)「エンタテインメント x VRの現状、クリエイティブ」

全天球映像作家 渡邊課 課長 渡邊徹(Concent, Inc.)氏
watanabe

ParadeAll株式会社 エンターテック・アクセラレーター
鈴木 貴歩氏
suzuki
渡邊氏のセッションはWEBテクノロジーブログメディアKONPEITOに詳細を寄稿しました。よろしければご確認ください。全天球映像(360度映像)制作コンセプトはとても共感できました。

1.映像制作をデザインの延長と考える
・ユーザー視点のストーリー
・させたい体験から逆算した撮影
・解禁後のSNSの広がりを意識

2.あたらしい技術を使う
・毎回の撮影ごとにチャレンジを入れる
・VR自体はもう、ちょっと古い

VRが流行っているから「VRを体験させる」ことが目的になっていてはダメ。「VRという手段を使って、ユーザーに何を体験させたいか」がコンテンツ作りには一番重要だと改めて感じました。また、VRはヘッドマウントディスプレイを用意したりと、体験するユーザー側のコスト高いので、毎回新しいチャレンジをして映像を制作し、体験するユーザーへの『おもてなし精神』が必要と語られていました。

VRのような先行投資をビジネス化するには?

スペシャルトーク

株式会社バンダイナムコエンターテインメント
Worldwide Planning & Development Unit 部長
ゲームディレクター/チーフプロデューサー
原田 勝弘氏
harada

原田氏は2011年からVRの取り組みを開始し、PlayStationVR向けソフトとしても話題の「サマーレッスン」をプロデュースされています。海外向けにも多く仕事をされている中で、日本でのVRの取り組みの課題を話されていました。

日本のゲーム会社はイノベーターであったが、現在はその地位を失っている。
・リスクヘッジできる優秀な人材が育つ、結果、リスクを伴うチャレンジは厳選され減少
・技術に敏感かつビジネスモデルに敏感な企業が少ない
・欧米と日本では投資額の大きさが違う
日本ではVRを経営層に見せても、先行投資の話をした後に思考停止
素晴らしいIP*(キャラクター)をたくさん持っているが、リスクを取って参入していかない、市場が育ってから入る

*IP:intellectual property(インテレクチュアルプロパティ) = 知的財産。
シリコンバレーではVRのような期待領域には、数百億単位でバンバン投資されます。日本のようにスタートアップコミュニティがまだまだの国は大企業が新規市場開拓にお金を使わないと、なかなか市場が発展していかないと思うのですが…VRでもFOVE社のように最初から海外で始動する選択肢になってしまいそうです。

テレビ制作とVR制作は全然違う

2)「放送局とVRの未来」

株式会社毎日放送
テレビ営業局営業開発部 企画プロデューサー
末永 久人氏
suenaga
株式会社テレビ朝日メディアプレックス
マルチデバイス事業部 ビジネスプロデューサー
阿部 聡也氏
abe
興味深かったのは末永氏が話されていた、同じ映像でもテレビと360度映像は全然違うということです。

テレビ屋≠VR屋
・距離感の取り方が難しい
・編集でなんとかならない
→撮影前にどうするかをしっかり考えないとダメ

主観と客観が入り交えない
・カット割りができない
・誰目線でとるか?考えないと意味のわからない映像になる

確かに編集が全てのテレビの世界と、周囲全てを一発撮りで撮影する360度映像では全然別物の映像制作なんだなと感じました。

体験型エンタテインメントの未来は?

3) 「VRと体験型エンタテインメント」

株式会社NHKエンタープライズ
グローバル事業本部 事業開発センター
デジタル・映像イノベーション エグゼクティブ・プロデューサー
田邊 浩介氏
tanabe

NHKの田邊氏は3Dメガネを装着して体感する8KVRシアター「Aoi -碧- サカナクション」のプロデューサー。テキサスで行われるカンファレンスSXSWに出展したとのこと。シアター型VRについてのトークです。
■Aoi -碧- サカナクション
sakana
▲画像:Aoiホームページより

シアター型VRの特徴
ヘッドマウントディスプレイ型VRは高い没入感を得られるがパーソナルVR体験
8KはVR体験を共有できるオルタナティブなVR装置「Shared Experience」

音楽やスポーツなどのライブ体験においては、みんなで感動を共有できるシアター型VRのほうが、ビジネス化できそうな気がします。(設備費も膨大ですが…)

株式会社ヒップランドミュージックコーポレーション 制作本部 クリエイティブルーム チーフ
棟廣 敏男氏
munehiro

ヒップランドと言えば、サカナクションやKANA-BOON等何かと話題のアーティストのマネジメント会社。棟廣氏は2016年 DMMの3Dホログラフィックシアター「DMM VR THEATER」にてクリエイター、プログラマーメインの音楽イベント「VRDG+H」をプロデュース。体験型VRについては以下のように語られていました。
■VRDG+H

お客さんにわかりやすい表現をすることが大切
DMMVRシアター以外でも体験できるもの(立ったり踊ったりしながらも体験できる等)

確かにまだまだ制約もあり、制作費もかかる体験型VRコンテンツ。音楽業界の中で唯一伸びているライブ市場。新しい体験のひとつとして、シアター型VRはひとつの可能性かもしれません。「VRDG+H」まだ観に行ったことが無かったので、早速チケット買いました!

DeNA流VRのビジネス化の上手さ

4)「VRによるエンタテインメントビジネスの未来」

SHOWROOM株式会社 代表取締役社長
前田 裕二氏
maeda
SHOWROOM」は元々DeNAの新規事業で始まったスマートフォンライブ配信サービスで、ライブ映像を見ながら、演者に「投げ銭」をできるのが特徴です。
showroom
▲画像:AppStoreより
DeNAからスピンアウトして、現在は会社として独立しています。SHOWROOMのVRのコンセプトは以下でした。

・スマホだけで楽しめるカジュアルVR
・VRでのマネタイズ戦略がある
→没入感があるため、普通のLIVE配信動画よりユーザーのエンゲージメントがある

あるグラビアアイドルのSHOWROOMの配信では、VR配信にすると、投げ銭売上が10倍にもなったそうです。また、ヘッドマウントディスプレイをユーザーが持っていないなど、楽しむハードルがあるVRコンテンツを、あえて「カジュアルVR」と割り切り、スマホだけでくるくる画面を回し、「カジュアルVRをユーザーエンゲージメントの一要素」にできているのが、DeNAっぽくてすごくマネタイズが上手いなと思いました。

結局は突破する力が大事そう

『THE VR PARADE』の終了後はネットワーキングパーティーもあったので、登壇者の方ともカジュアルにお話できて、行った価値のあるカンファレンスでした。VRのような投資先行型領域を小さい会社でビジネス化していくのは、難しいことだと思います。今回のようなネットワーキングで上手く社外とパートナーシップを組みながら、チャレンジしていく突破力が結局重要なんだろうな…と感じました。

なんだかすごく長文になってしまいましたが、どなたかのお役に立てれば幸いです。

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